26〜28話の義朝を振り返る

26話「平治の乱
この回は、義朝の台詞ひとつひとつに痺れまくった。一貫して低く強く、威厳に満ちた台詞回しが安定して聞き応えがある。やっぱり玉木さんの台詞回しは時代劇にぴったりだ。(あと軍人も) 表情もまた、戦モードの玉木は終始、苦みばしった渋面で、男臭くて大好物だ。
「構え」
「放てー!」
号砲一発って感じですね。
「女子供とて容赦するな!」この言葉が聞けるとは!感動した。
「皆のものようやった!」「何も恐れることはない!」不敵な笑み、今まで以上に低くドスの効いた声。
田中幸太朗が家来にいる!あれほどなりたくてなれなかった北面の武士(史実では後に義朝もなったようですが)の面々を配下におくようになったとは。感無量。
「世に示すためだ。…〜思い知らせてやる」
目が逝っちゃってるのが素敵。力強くていいなぁ。ほれぼれするね。これらの義朝を見ていると、いかに玉木が思い切りの良い演技をしているか、触れ幅の大きい演技を見せているかがわかる。特に今回の脚本では、平治の乱を起こすまでの義朝にはこれが一番大事かと。玉木はよく理解している。
27話「宿命の対決」
信長VS光秀再び!SPドラマ「敵は本能寺にあり」にて共演した玉木VS梅雀さんがまた見れるとは!感慨深いですね。今の玉木でまた織田信長が見たいのう。やっぱ玉木宏は人の上に立つ役が似合いすぎる。
狸オヤジ家貞の名簿作戦をいぶかしむ義朝。
「さような男ではないー!」の言い方が迫力あり。
「避けては通れぬ道だったのだ」は正しいのでしょう。清盛と決着をつけるためとはちょっと違うと思うけど。
「この日本一の不覚人がー!」出たー!!かの名台詞!言い方がいかにもワルっぽくて素敵。
「それでこそ貴様だ。清盛ー!!」MAXである。戦バカの真骨頂。振り切れてます。その後の出撃シーンで源氏のテーマが劇伴に。嬉しい。
「待賢門を守れ!」という台詞も聞けてよかった。
「近寄るな。わが妻にはあらずと心得よ」常盤の前で仁王立ち。覚悟を決めた男の台詞。
「行ってまいる」戦いに赴く男とその妻。目が優しくて切ない。
重盛(窪田正孝)の戦闘シーンはかっこよかったねー。本人時代劇が好きというだけあって、台詞回しも殺陣もお見事。
源氏の白旗。もっとたくさん立ててー!だがこれも見れて本望。
馬上で剣を抜く仕草が勇ましい。この一連のシーンでも、義朝は瞬き一つせぬ。このあたりの玉木の意識の高さがさすがだなと思う。
「こい!」とばかりに顎で合図する。これにはぐっときた。…まだ玉木くんが20代前半の頃、ヤンキー映画とかもやって欲しいと思っていた。学ランを着て、ケンカ三昧の。…この仕草に、その願望が少しは果たされたような気がして、すごく嬉しかった。
タイマン勝負はムチャ振りでしたよね。でも、見れてよかったとは思う。演出もわりとまともだったし、意外にもずいぶんガチンコだったし。
組み伏せられた義朝の表情に見惚れた。なんて彫りの深い、ドラマチックな顔立ちなのだろう。役者をやるために生まれたような顔だよなぁ。しかも、バリバリ王道の。往年の銀幕スターのような劇的な存在。
28話「友の子、友の妻」
落ち延びる源氏一行。残念ながら雪の中ではありませんでした。まるで日本の山奥の設定なのに大きなシダが茂っていた『ラストサムライ』のような違和感。
朝長のシーンがあったのはありがたいですが、正直、朝長は別の人が良かったな。もっと線の細い、気弱そうな優しげな人をイメージしていたのだ。でも、深く描く時間がなかったので仕方ないのかな。
「正清」と呼ぶ声が優しくて切ない。義朝と政清の主従関係は本当に良かったな。正清の人も回を重ねるごとにどんどん良くなっていった。
長田邸での最期は、私が見たかった最期とはちがっていた。自決は義朝らしくない。自力救済を地でいって欲しかった。でも、長田を見る目つきが究極に凄かったね。奪った刀を振り回すシーンがかっこよくて、もっともっと殺陣を見たかった。あっけなさすぎた。もう少しあがいて欲しかった。
でも、大河ドラマによくある、メイン級の登場人物の死に回では、延々と大仰な殺陣が続いたり、死にそうで死ななかったり、死に際のわざとらしい長台詞とかが多いので、そうじゃなくて良かったかもなとは思う。が、しかし、もう少し余韻は欲しかったな。最後の瞬間に清盛が出てくるのは勘弁してくれ。
頼朝が殴られたら、あらびっくり、義朝になっちゃったー!には驚いた。この演出はやりすぎだ。でもって、この時の清盛のえんえんと続く泣き言にむかついた。「残された者の身にもなってみろ」?「この先も生きていかねばならぬ」?極めつけが「それがいかに苦しいことかわかるか?」だと?やれやれ、白けてしまったではないか。清盛…松山さんが何かのインタビューで「(1年で清盛の一生をやる)僕の方が清盛公より大変」とかなんとか言ってたのを思い出し、申し訳ないが、つい重ねあわせてしまった…
最後の義朝の横顔と涙は印象的でしたけどね。でも別にこういうカットはいらない気もした。


清盛の台詞じゃないけど、「ただ一心に太刀を振り回し、武士として生き、武士として死んだ」義朝の、そのストレートで迷いの無い生き様は実に見ごたえありました。玉木宏はその義朝が降りてきたかのように見事に義朝の一生を生きた。いかに義朝をリスペクトし、真摯に義朝を演じようとしていたかがひしひしと伝わってきた。もともとポテンシャルの高い役者だとは思ってましたが、もともと本人が持ち合わせていた魅力と義朝のキャラが見事にマッチして、いちだんと質の高い演技をたくさん見せてくれた。
時代劇ならではの所作の美しさ、重みのある台詞回し、大袈裟でなく適度なためや見栄の切り方、ケレン味…。繊細さから大胆さ、粗野…振れ幅の大きい演技の数々。若者時代の意気盛んで向こう見ずな振る舞いから中年の渋みと落ち着きある所作、父親としての温かみと大きさ、そして何より、棟梁としての近寄りがたい威厳と風格。どれも素晴らしかったです。

ネットなどで大河ファンからの玉木義朝の評判が良かったのも嬉しかったです。「玉木と時代劇」については以前にも書いた気がするが、今回も、本人が大河ドラマ(時代劇)に対して、敬意をもって最大限の努力をしてきているというのが一目瞭然だったのが、大河ファンから高評価を得た所以だと思う。大河ドラマ(時代劇)に対して、どこか甘い考えだったり、上から目線だったりする役者は、演技にもそれがにじみ出てしまう。そういう役者には大河ファンは厳しいですからね。
本当に、ファン冥利に尽きる半年でした。ぜひまた大河ドラマ(時代劇)に出てその漢っぷりを拝ませていただきたいものです。