空飛ぶタイヤ

ドラマ公式サイト
先日wowwowにて放送された、タイヤ脱落事故と大手自動車メーカーのリコール隠しがテーマのドラマです。我が家はwowwowが見られない〜と嘆いていたところ、ある方のご好意で観ることができました(ありがとうございました!m(__)m)。凄いドラマだった〜。見始めたら止まらなくて、ダンナと二人で夜中までかかって一気見してしまいました。


以下、ネタバレ感想



原作の良さを損なうことなく、映画のように緻密で重厚なドラマでした。あのボリュームを5話で終わらせるのは惜しい気もするけど、逆にスピード感があって良かったのかも。このスタッフとキャスト陣はほんと凄い。唯一、脚本が心配でした。前川氏はあの氷壁の脚本を書いた人なんだよねぇ。あまりニュートラルな観点ってものが感じられなかったので。でもほぼ原作に忠実だったし、オリジナル部分もまあ納得のいくつながり具合だったし、良かった良かった!
この作品は、タイヤ脱落事故の一件を、自動車メーカーサイド、運送会社サイド、メイン取引銀行サイド、警察サイドと、それぞれの視点と立場から捉えストーリーを進めていく多重構造になっていて、それぞれが、いろいろな重いモノを背負いながら動いていき、そしてついにひとつの結末へと集約されていく。これが原作の醍醐味っていうか、一番好きなことろだったのだけど、ドラマでもバッチリ再現されていてゾクゾクしてしまいました。
キャスト陣も文句無し!主人公・運送会社の社長赤松を演じた仲村トオル、すごく良かったです。最初はかっこよすぎるんじゃ?と思ってたけど、見ているうちにそんなこと気にならないくらい、すっかり赤松でした。倒産寸前にまで追い詰められたその様子は見てられなかったよ〜。道端でぶっ倒れそうになる赤松に思わず「ひっ!」と叫んでしまったよ。しかしながら、追い詰められて追い詰められて、ぎりぎりのところで踏ん張りながらも、けっして諦めない闘志は最後に実を結ぶ。そのV字回復というか、9回裏逆転サヨナラゲームさながらの大勝利は、それはもう、半端ないカタルシスでした。
コンプライアンスは企業を守るためにあるんじゃない。人を救うためにあるんだ。」
これは井崎の言葉だったかもしれないけど、このドラマのテーマをずばり表している言葉ですね。
そして自動車メーカー勤務の沢田役の田辺誠一、これはめっちゃはまり役でした。沢田というのは実に難しい役どころで、複雑な心の揺れ、そして白と黒とグレーの感情表現、かつ知的さ、ずるさ、純粋さ、いろいろ表現できる人でないとならない。そういう点では田辺さんはすごい上手い方なので、安心して見ていられました。
銀行員井崎(萩原聖人)。銀行員としての正義感を貫きたいのに、上司やメーカー側からの圧力に苦しむ中間管理職としての井崎の苦悩は、黒幕であるメーカーの専務の姪(ミムラ)という婚約者というオリジナル設定とのからみに時間をとられてしまった感じ。それはそれで、井崎の苦悩が分かりやすくなって良かったとも言えるかな。最終回、「リークしたのは君だろう?」と聞かれ、「違います」と押し通した井崎には溜飲が下がりました。
高幡刑事役の遠藤憲一もすっごく良かった。彼は本当に良い役者ですね〜。カップ麺を投げつけるシーンには思わず「ひっ!」って声が出ちゃったよ。こればっかりだな。内に篭められた怒りや悔しさが爆発した一瞬でしたね。
企業の闇の部分を描いているこの作品、スポンサーなどに左右されないwowwowだからこそ作れるんでしょうか。池井戸潤の他の作品も是非このスタッフでドラマ化して欲しいな。「オレたちバブル入行組」とか「果つる底なき」あたり面白いかも。

空飛ぶタイヤ (Jノベル・コレクション)

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