6ステイン

6ステイン (講談社文庫)

6ステイン (講談社文庫)

もうかなり前になるが、「亡国のイージス」を読んだ時の衝撃と感動は今でも忘れられない。ボロ泣きで読みふけったものです。「6ステイン」は、その作者福井晴敏の短編集。短編って作家の力量が如実に表れると思うのだが、福井さんは短編もすごかった。防衛庁情報局の工作員達を主人公にした6作が収められているが、この作家は人の生き様を描くのがとても上手い。とにかく熱い。「イージス」で真田さんが演じた、「くたびれた親父系の主人公」ばかりなのですが、彼らの悲哀、そして情の厚さに胸を揺さぶられる。それが浪花節でこそあれ、偽善的では決してないのがリアル。「イージス」ファンには嬉しいサービスもあります。
ここで少し「イージス」話。映画の如月行は玉木氏にやって欲しかったんだよなぁ。当時でさえ年がいきすぎではありましたが、ルックス・醸し出す雰囲気は玉木氏にぴったりだった。勝地くんも日本男児の凛々しさで良かったのですが、行はむしろ、ミステリアスな美貌と冷たさを前面に醸し出して欲しかった。暗雷のようにね。
亡国のイージス」の脚本家は今度の「ミッドナイトイーグル」も手がけてるんですね。なんだか不安だなぁ。長い原作をまとめるのは大変なんだろうけど、「イージス」はあまりにも説明不足なので深みがなくなってしまっていた。その分、役者陣が素晴らしい演技でフォロウしているので、娯楽映画としてはそれなりに見ごたえある映像に仕上がってますが、原作ファンには物足りない出来だったのは否めない。
ミッドナイトイーグル」もストーリー性にはあまり期待しないで、迫力ある映像を楽しむ、くらいの心づもりで待った方がいいかも。「この映画は最近多い男がピーピー泣く映画じゃないんです!」とプロデューサーが言ってましたけど、別に泣いても泣かなくてもどうでもいい。この映画のキモは「緊迫感」と「しぶとい男達」にあると思っているので、そこをしっかり押さえてくれて、なおかつ安っぽくなければそれでいい。