「河内源氏―頼朝を生んだ武士本流」

河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流 (中公新書)

河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流 (中公新書)

うむ、これは面白い!(我が家では「うむ」大流行、勇者ヨシヒコ効果・笑)
我らが源義朝の一族である河内源氏の誕生から頼朝による政権樹立に至るまでの山あり谷ありの激動の歴史が記されています。
河内源氏の名は歴史オンチな私でも知っていたほど有名だし、武士の本流として後世の武士達からも崇拝されてきたと認識していましたが、この本を読んで、彼らのイメージが覆されたかも。ある種、美化されてきた部分があるけれど、実際に過酷な時代を彼らは必死に泥臭くなりふり構わず生き抜いてきた、土性骨あふれる一族だった。だからこそ武士の本質を確立するに至った。江戸時代あたりのストイックで紳士的な武士の本分とはまた違う、原始的な武士の本能のようなものがこの本から伝わってきたような気がします。
河内源氏は決して順風満帆にその地位を築き上げてきたわけではなく、何度も雌伏の時を過ごしたり、他の源氏に本流を取って代わられそうになったりと、浮き沈みの激しかったこと! 沈みそうになるたびに、なんらかの僥倖があったり、自力救済をもってして、かろうじてその血を繋いでいった時代も多かったようです。そうして時代を重ねていくうちに、彼らの中の「自力救済」が必然的に強化されていったことが、河内源氏の強みであり、彼らの代名詞になっていった。そして後世の武士の礎となっていったのかもしれません。
六代目に当たる義朝のことも、70Pほどにわたって詳細に記されています。先に読んだ「保元・平治の乱を読みなおす」とかぶる部分も多いですが、こちらの方が読みやすく、わかりやすく、描かれている気がしました。
河内源氏代々の嫡子の流れをバックボーンに読んでくると、より、義朝の代がドラマチックに感じられます。彼もまた、先祖に負けず劣らず激動の生涯でしたが、最後の最後まで、彼は諦めなかった。絶望的な状況に追い込まれてなお、生き延びて、武力で再起をはかろうとした。自らの力量だけを信じて。

“坂東の自力救済の世界を生き抜いてきた、義朝の真骨頂”
元木先生の素晴らしい一文です。この文の前後は万感胸に迫るものがありました。ぜひともお手にとって読んでみてください。
そして、義朝は滅亡すれど、(池の禅尼と清盛のおかげもあるが)まさに危機一髪のところで、河内源氏の血は生き残り、頼朝は義朝の思想を受け継いで、逃げずに挙兵をはかり、ついには鎌倉幕府を樹立するに至った。劇的すぎて、言葉もありません。
来年の大河『平清盛』では河内源氏三代が登場します。小日向文世@為義、玉木宏@義朝、岡田将生@頼朝。この本に記される河内源氏の“不屈の精神”がいかんなく描かれることを願ってやみません。

元木先生の「保元・平治の乱を読みなおす」の感想はこちら