『ピスタチオ』梨木香歩

ピスタチオ

ピスタチオ

緑溢れる武蔵野に老いた犬と住む棚。アフリカ取材の話が来た頃から、不思議な符合が起こりはじめる。そしてアフリカで彼女が見つけたものとは。物語創生の物語。(筑摩書房)

梨木さんの純粋な小説を読んだのは久々な気がします。この人の本を読んでると、だらしない格好でいるのが申し訳ないような気にさせられ、思わず背筋を伸ばしてしまうのですが、今回の作品は割りと砕けてたかな。あくまでも梨木作品比ですが。
半分エッセイ、半分小説、そして最後に挿入される短編。素敵です。いつものことながら、一読では理解しきれない深みを感じました。
この人の描く物語の主人公って、頑なで、自由で、自然との垣根がとても低い、という特徴があるような気がするが、今回もそれは健在。40歳、独身、ペンネームは“棚”。もうこれだけでかなり独特な世界。おまけに気圧の変化を体で感じることができるって、ワンピースのナミのようです。
それにしても、とってもスピリチュアルで不思議なお話でした。前半は日本、後半はアフリカのウガンダが舞台。日本での犬の病の描写はとても辛かったけど、それが後々ああいう風につながるなんて!
生と死。精霊の存在。自然と人間。美しく怜悧な筆致で描かれる梨木ワールド。
この物語のテーマのひとつでもあるのですが、
「死者には物語が必要」…そして
「死んでから初めて始まる人間関係」…という文章にヤラレました。
思わず真島と芽衣子を連想してしまったじゃないか…。