覇王の番人(上・下)

覇王の番人 上

覇王の番人 上

覇王の番人 下

覇王の番人 下

明智光秀と忍びの小平太は戦国の世を生きる 信長の天下統一に随伴する明智光秀と、その光秀に命を預けた、かつ想いを預ける忍びの小平太。二人は各々のの戦世を生き抜く。著者初の時代小説。渾身の大長編。

大好きな真保裕一がついに戦国歴史小説を書いたー!しかも主人公は明智光秀だ。いやー感無量。正直、史実部分の描写を余さず書いてくれるので、テンポに乗れず、読むの大変だったけど、下巻の200Pを超えた辺りからびっくりするほど面白くなってきて、読み終わった後は満足感と切なさでいっぱいになった。途中で読むの投げ出さないで良かったー。(実は読むのに2週間くらいかかって何度も挫折しかけたんだけど。)本能寺の変に至るまでの織田―明智周辺の出来事を、光秀側、そして光秀に仕える忍びの立場から描写しているのが新鮮で面白かった。
この明智光秀は凄くイイです。人徳に厚く誠実で才能にあふれた立派な武将です。「明智左馬助の恋」に登場する光秀像と近いかも。それだけに、本能寺後の光秀には泣けた。
もう一人の、まさに影の主人公とも言うべき、忍びの小平太がすごく魅力的。生い立ちから忍び同志の戦いに至るまで、小平太パートは壮絶そのもの。小平太、切ないです。(ちょっぴり康豊とかぶるエピもあったりして。)また、小平太の光秀に対する忠節がまた素晴らしくってねぇ。ラスト近辺はかなり胸が締め付けられました。
本能寺の変」の事件というのは実に謎が多いですよね。今まで読んだ関連本や小説でも諸説あるので、今回はどの説を採るのか興味津々でした。本能寺の変そのものの描写は少なく肩透かしだったものの、謀反に至る過程・動機が時間をかけて丁寧に描かれており、なかなか説得力がありました。
さて、ここに出てくる信長ですが…。さすがに光秀ビジョンの信長が多いので、外道で鬼で、ものすごく怖い信長ではありますが、それでもやっぱりかっこよかったです。ただただ一心に天下を目指して駆けていく信長の、哀しみ・痛々しさが胸に迫ります。生き急ぎすぎたんだね…。信長の台詞に、
「家も血も名もあるものか」
というのがあるのですが、玉木信長の声で見事に脳内再生されました。