水底の骨

水底の骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

水底の骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

海外ミステリでは、エルキンズが近年のお気に入りです。この「水底の骨」は、スケルトン探偵シリーズ最新作で、12作目(1作目は未翻訳)。
形質人類学者で大学教授のギデオン・オリヴァーの専門は「骨」。遺骨からそこに隠された犯罪の真実を暴いていく、その過程が毎回とっても面白いのです。骨の薀蓄は、豆知識としてちょっと得した気分になるし、オリヴァーと妻のジュリーや友人のジョンとの軽妙な会話も楽しい。表紙がなぜかシャレコウベですが、猟奇的ではありません。知的で健全なユーモアに富んでいて、意外と読みやすいです。
推理部分については、本格的な範疇にはいるんじゃないかな。この人の作品は一定以上のレベルを保っているので安心して読めます。まぁ、前作「骨の島」はいまいちだったけど・・・。ストーリー展開や登場人物・舞台設定に、どこかクラシックな雰囲気が漂ってるのもいい感じ。クリスティを彷彿させるというか。重すぎず軽すぎず、そして読後感は爽やかです。
良かったらぜひシリーズで、できれば翻訳されてる中では最初の作品「暗い森」から読まれてみることをオススメします。世界中あちこちが舞台となるので、ちょっとした旅行気分も味わえます。「水底の骨」ではハワイでした。モンサンミッシェルが舞台の「古い骨」というのもありますよん。シリーズ中一番有名な作品です。
古い骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
その他、エジプトやユカタン半島、アラスカ、英国、イタリアなど。本国アメリカが舞台なのは、意外と少ないかも。また、世界各地の名物料理を、登場人物たちがおいしそうに食べてるのが実に羨ましい。料理の描写に優れた作品ってけっこうポイント高いですよね。実にひとつぶで三度くらいおいしいシリーズです。
作者の他シリーズ、「美術館学芸員クリス・ノーグレンシリーズ」、「美術鑑定士ベン・リヴィアシリーズ」もオススメ。絵画についての薀蓄が半端じゃないので、絵画好きにはたまらないかもしれません。もちろん私のように西洋絵画の知識がなくとも、十分楽しめます。

ギデオン・オリヴァー教授(スケルトン探偵)シリーズ

  1. Fellowship of Fear (1982)未訳
  2. 暗い森 The Dark Place (1983)
  3. 断崖の骨 Murder in the Queen's Arms (1985)
  4. 古い骨 Old Bones (1987)
  5. 呪い! Curses! (1989)
  6. 氷の眠り Icy Clutches (1990)
  7. 遺骨 Make No Bones (1991)
  8. 死者の心臓 Dead Men's Hearts (1994)
  9. 楽園の骨 Twenty Blue Devils (1997)
  10. 洞窟の骨 Skelton Dance (1999)
  11. 骨の島 Good Blood (2005)
  12. 水底の骨 Where There's Will (2007)
  13. Unnatural Selection 未訳

美術館学芸員クリス・ノーグレンシリーズ

  1. 偽りの名画 A Deceptive Clarity (1987)
  2. 一瞬の光 A Glancing Light (1991)
  3. 画商の罠 Old Scores (1993)

美術鑑定士ベン・リヴィアシリーズ

  1. 略奪 Loot (1999)

           主にハヤカワミステリ文庫より