栄光なき凱旋

栄光なき凱旋 上

栄光なき凱旋 上

栄光なき凱旋 下

栄光なき凱旋 下

上下巻合わせて1300Pくらいあったかも。疲れたが、あまりの面白さにぶっとんだ。真保裕一初の戦争モノだけあって、気合の入り方が今までと全然違う。もともと戦争モノは悲惨なので得意ではないのだが、好きな作家が満を辞して書いてくる戦争モノとあれば、読まないわけにはいかないのだ。
古処誠二の場合もそうだった。良質なミステリ数作でぐっと引き寄せられたかと思ったら、いつの間にか戦争シリーズばっかりになってた。これがまた、ものすごく良かったので、戦争モノが読めるようになったのは古処さんのおかげですm(__)m。特に「ルール」は生涯忘れられそうにない作品。また「七月七日」で、日系アメリカ人語学兵の苦悩が描かれていたこともあり、同テーマの「栄光なき〜」もとっつきやすかったのは助かった。
この「栄光なき凱旋」の主役は、アメリカで産まれた3人の日系二世の若者たち。日本軍の真珠湾攻撃によって、彼らの運命は大きく変動していく。アメリカ人でありながら、さげすまれ、軽んじられる日系人の立場。そして彼らもまた、アメリカ兵として戦いに身を投じていく。一歩兵として、あるいは語学兵として。アメリカ人でありながら、敵国人の血が流れていること。その事実は過酷なまでに壮絶なものだった。
読み終わってから、しばし呆然とし、涙が止まらなかった。あまりに悲惨な描写が多いものの、ジロー、ヘンリー、マットの3人が魅力的にキャラ立ちしており、すんなり感情移入できるのが救いだった。これはいつか、ぜひとも映画化していただきたいものだ。その時は、ジローは是非玉木宏で。一匹狼でクールでワルで、かなりヒネた性格なのだが、あえて見てみたい。