エピデミック

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川端裕人ファンならばこの作品はたまらないものがありますね。これは氏が満を持して書かれたと思われる「疫学小説」。東京近郊にて瞬く間に広まった謎の集団感染に挑む疫学者たちの緊迫の10日間を描いた本格小説です。
作品としては余分な描写と書き込み不足の描写、両方が目立ったりしてアラもけっこう多いのですが、それ以前に、テーマの持つ緊迫感とこれからどうなる?といった焦燥感、そして本当の原因は何?といった科学ミステリとしての迫力にぐいぐい引き込まれてしまいました。集団感染を扱った小説や映画は多々あるようだが、疫学からの観点で書かれた小説はかなり新鮮であるらしい。(自分は「アウトブレイク」くらいしか観てないのでよくわからないが)
やはり川端氏にはこういった科学的な分野におけるテーマをとことん掘り下げたモノをどんどん書いてもらいたいな。氏のすごいのは、いろんな分野の話を分かりやすくかつ魅力たっぷりに読者に提供してくれる点だと思う。宇宙のこと、川のこと、恐竜のこと、絶滅危惧種のこと、生態系のこと、そして時には父親による育児観etc・・・。もう大好きです。
余談ですが、これを読んでる前後に映画「感染列島」の制作発表ニュースが流れてました。主役は妻夫木くん。この映画は原作は無い模様(?)ですが、同じ集団感染ネタなので興味をそそられます。